電通の「日本の広告費2017」を読んで

 

 

http://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/0222-009476.html

 

<媒体別>

 

マスコミ4媒体全体では微減傾向が続いています。

その中でも傾向があり、「紙」が苦戦しています。

 

新聞は減少傾向です。

雑誌が一番減少傾向が激しいです。

ラジオは微増が続き善戦しています。

テレビは微減です。

 

ここから見えることは2つあると思います。

・紙は減少 広い意味でのデジタルメディアは伸びる。

・ストックよりフロー。ラジオは流れて記憶から消えていきそうですが、それが故にそのときに反応を起こせる広告には有効そうです。

・「ながら」メディアは強い 後述するインターネットもそうですが、「何かしながら体験できる」媒体は強そうです。

 集中して何かを読む時代は終わりなのかも。少なくとも目と耳は別々に動く時代なのかなと思います。

 

ただ、このデータに一つ疑問があります。

それは「デバイス(新聞紙・テレビなど)」と「メディア(●●新聞、●●テレビ)」がほぼイコールであった時代は終わっていないかということです。

例えば、朝日新聞の広告費は「紙の朝日新聞」だけで測るのではなく、「メディアとしての朝日新聞」つまり、紙もネットもアプリもすべて合算して

図ることで「どのようなメディア(情報)が広告媒体として価値があるのか?」を図れるのではないかということです。

実際に朝日新聞でいえば、半期(4月~9月)比較で売り上げが3%以上下がっていますから悪いのは事実なのですが、

「日本の広告費」の新聞は5%ダウンですからそれよりはいいとう状況です。

 

 

さて、インターネット広告費は順調に増えています。

一時期停滞気味だった広告制作費も増加傾向が続いています。

しかし、媒体費が10%を大きく超える増加だったのに対して、制作費は10%以下の伸び。

この違いは力関係かなと推測します。

リスティング広告に代表されるようにネット広告は媒体やユーザと広告主3者の関係で価格が決まってきます。

その結果単価が上昇傾向にあるんじゃないかなと思います。

制作は人手不足の状況はありますが、効率化も進んでいるのでそこまであがらないのかなと感じました。

 

最後に、プロモーションメディアです微減傾向が続いています。

こちらも媒体により差があり、折込やフリーペーパー、DM、電話帳など「紙」が苦戦する傾向は変わらないようです。

屋外、交通などは横ばいで、展示・映像は増えています。

 

「もの」から「こと」に消費が移ったといいますが、情報についてもこの傾向がでていると思います。

「ゴミ」にもなってしまう紙が敬遠される傾向はこれ以降も続くんではないでしょうか?

それよりも電車広告などで記憶や記録に訴えるもの、タイミングを計って最適化して出される広告が有効と思う広告主が増えているのではないでしょうか?

 

なお広告費は全体で増えています。

過去の傾向では五輪などスポーツイベントがある年は増える傾向がありましたが、

それが何もない2017年に増えたのは景気の影響や産業構造の変化で広告費を多く使うビジネスモデルが増えたからだと思います。

 

<広告費が多い業界>

そこで別のデータを出します。

どの業界の広告費が多いのか、東洋経済を見ましょう。

http://toyokeizai.net/articles/-/187757

 

トヨタ自動車やソニーなどメーカー、イオンやセブン&アイホールディングスなど小売が多いです。

広告費が売り上げに占める割合が5%を超える企業を「広告依存企業」とここでは定義します。

その広告依存企業は下記のような傾向です。

・武田薬品工業などの製薬会社

・リクルートなどの媒体会社

・花王など個人消費財

・任天堂などのゲーム会社

こう見ると、単価が高いものではないけど、広くいろんな人が使うもので、

スペックやサービスに多いな違いがあるものが多いです。

(個人的偏見ですが、自動車や家電は機能には大きな差はなく、「それでないとできない」違いはないと思っています。)

さらに見ていくと「固定比率が高く、変動費率が低い」業態が広告費率が高いようです。

 

確かにそれは合理的です。

変動費率が高い商材は売り上げが伸びなくても利益は減りにくいですが、

変動費率が低い商材は売り上げが減ると利益に打撃があり、売り上げが増えると利益が一気に増えます。

そういう商材は広告費を多く投じて売り上げをあげても広告費をペイできるということです。

広告費用を10%以上かけている「広告重度依存企業」にその傾向があります。

ディップやエン・ジャパンなど求人媒体企業は広告費率が高いです。

 

さて、本題に戻り、スポーツイベントがないのに広告費が増えたことに産業構造の変化の影響があるのは事実と言えるでしょう。

 

 

<総括>

個人的な感想ですが、新聞などはまだこの程度あるんだなあと感じますし、

テレビが減らないのは不思議です。

テレビ広告は誰でも買えるわけではないし、営業力もあるからなのかなと思います。

逆にネットは広告枠の増加を考えればもっと増えそうに感じますが、

テレビがNHK以外広告モデルなのに対して、ネットメディアは必ずしもそうではないからというのもあるかもしれません。

会費で運営するサイトも多いですからね。

 

 

今後世の中の変化とデジタルの進化で、クロスメディア的な広告が増えるでしょう。

また効果を図る軸もできてきて図りやすくなると、

テレビ広告の単価は下がりそうな気がします。

DAZNに代表される有料の情報配信媒体が増えれば、そもそも広告費で運営するのではなく、

会費で運営するようになる媒体も増えるでしょう。

 

ユーザが「広告を見る代わりにただ(もしくは安価)でもらう情報」と「お金を支払ってしっかり見る情報」に分かれてくるのかなと感じます。

 

その辺をメディアの運営者も、広告出稿者も考える時代です。